現代社会で、お坊さんに悩みを打ち明けたいと思う人は、いったいどれほどいるのでしょうか?
SNSがまだ現在のように発達していなかった頃、お坊さんやお寺が話題になる場面といえば、「お布施の定額化」や「僧侶派遣」といった議論が中心でした。2013年にアマゾン(よりそう)が「お坊さん便」を始めたときには、賛否両論が巻き起こり、お布施のあり方や僧侶の経済事情に注目が集まりました。一方で、十分な収入が得られず、派遣僧侶として働かざるを得ないお坊さんたちの切実な現実もそこにありました。
そんな中、2012年に誕生したのが、お坊さんにオンラインで悩み相談ができるQ&Aサイト「ハスノハ」でした。インターネットで「お坊さん」と検索すると、僧侶派遣サービスが検索結果を独占していた時代に、ハスノハは静かにスタートしました。しかし、初めの数年はほとんど注目されることなく、利用者もまばらでした。
SNS時代がもたらした変化
転機が訪れたのは、SNSが急速に普及し始めた頃。真剣に悩みに向き合うお坊さんの言葉が、少しずつ人々の心に響き、シェアされるようになりました。それは、温かさや誠実さ、そして仏教の知恵が感じられるものでした。その結果、ハスノハの利用者は増加し、2016年には全国テレビで取り上げられたことで、一気に注目を浴びる存在となりました。その頃には150人のお坊さんが数千件もの相談に対応しており、サイトがパンク状態になるほどの盛況ぶりでした。
しかし、この人気は同時に、新たな課題も生み出しました。回答者であるお坊さんの数が相談の量に追いつかず、質問の制限を設けざるを得なくなったのです。
仏教の教え、動画から世界へ
それから10年以上が経ち、ネットの世界はさらに進化を遂げました。YouTubeやTikTokのような動画プラットフォームを通じて、仏教の教えを広めるお坊さんが次々と現れています。大愚和尚やふるたに和尚といった人気僧侶たちは、10万人を超えるフォロワーに仏教の智慧を届け、多くの人々の救いとなっています。
そしてこれから、オンラインの舞台はメタバースへと進化していくでしょう。時間や空間を超えた仮想空間で、私たちはさらにリアルな形でつながることができるようになるかもしれません。しかし、その一方で、世界はますます不安定さを増しています。戦争、災害、地球温暖化――これらがもたらす不安や苦しみは、私たちの日常から切り離すことができません。
お坊さんの言葉が持つ力
オンラインで仏教の教えを届けること。それは、これからの社会においてますます重要な役割を果たしていくでしょう。かつて僧侶派遣サービスでは、読経以上のことができなかったお坊さんたちが、今では世界中に法話を発信できる時代が到来しています。
2012年、お坊さんたちは「ネット上に自分の言葉を残すなんて、何を言われるか分からない」と不安を口にしていました。
しかし、2024年の今、彼らの言葉は時間や空間を超えて、多くの人々の心に届き、救いを与えています。技術の進化はこれからも続き、日本のお坊さんの言葉が多言語に翻訳され、世界中の人々に広がる日が来るでしょう。
ハスノハを訪れる多くの人々は、悩みを抱えながらも、誰かに話を聞いてほしいと願っています。そして、お坊さんたちはその願いに応え、一つひとつの心に寄り添い続けています。
「あなたの心の苦しみを、どうぞここでそっと話してください。私たちが耳を傾けます」
その言葉の先にある救いを信じて、ハスノハは今日も静かに門を開けています。
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