お坊さんとオンラインで個別に直接相談できる
2020年3月11日。東日本大震災から9年を経て、「お坊さんオンライン個別相談」をリリースしました。
第二幕始動。オンラインだから自宅からスマホで
東日本大震災をきっかけに、2012年にリリースしたhasunohaは2020年で9年目になりました。当時、ネットでお坊さんに悩み相談しようなんて人は誰もいませんでした。ネットで文字が残るリスクを冒してまで回答をしてくれるお坊さんもほとんどいませんでした。それでも、地道に丁寧に真摯に向き合ってくれるお坊さたちと一緒に続けてきた結果、hasunohaはテレビなどでも紹介してもらえるまでになりました。
今では、お坊さん250名、相談累計4万以上、月間の訪問者数が100万に達するまでになりました。相談が殺到して回答が今でも追いつかず、2016年以降ずっと質問制限をしています。
画面の向こうに感じる温かさ
ネットでのテキストのやりとりでは、顔は見えません。表情や話し方から読み取れるものがありません。ただ文字を読んでいくだけです。それがテキストのやりとりのデメリットでもあります。
それでも、4万もの相談に真摯に向き合っていく中で、スマホの画面を通した質問回答だけの関係から、その奥にいる「人」に触れ合えるときが出てきています。
パートナーの不倫からやり直したくても心が壊れてしまった人、親との不仲に親に死んでほしいとさえ思っている子供さん、誰にも必要にされていないと生きる意味を問う人。そんな方々から、救われましたと涙のお礼があり、ものすごく腑に落ちましたと前向きになれそうなお礼もあり。
投稿をしなくても、そんなやりとりを読んでいる人もhasunohaにはたくさんいます。
お寺 信仰、僧侶の人柄に触れたいと、あのお坊さんと話してみたい、会ってみたい。そんな人が出てくるのも、いつしか自然なことのように感じていました。
オンライン会議サービスの登場
ネットはテキスト+画像から動画に軸足が移っています。youtubeは全盛ですし、レシピサイトも今や動画がメインです。
ネットでのコミュニケーションのあり方も急速に変わってきました。zoomなど使い勝手の良い新サービスも登場し「オンラインビデオ」を利用したサービスが急増してきました。
zoomを使った遠隔でのビジネス会議や、英会話、ピアノレッスンなどの個人オンラインスクール、1対1のオンラインカウンセリング、キャリア相談など、現地に移動しなくても家からスマホだけで受けられる環境が整ってきました。
今、コロナウィルスによるテレワーク、WFHの高まりで、zoomが一躍脚光を浴びたのでご存じの方も多いのではないでしょうか。
hasunohaで「あのお坊さんと話したい」と読者さんとの信頼関係ができてきたことを肌で感じながら、zoomのようなインフラの充実もあり、hasunohaでもオンラインの個別相談の企画アイデアは2年くらい前から出ていました。
企画開始
企画するにあたり、相談システムを個別で開発するのか、zoomのようなサービスを利用するのか。そのときの条件や制約をどうするのか。相談者と回答者のマッチングをどのように行うのか、申込から相談まで相談者ごとにどう管理するのか、料金や時間をどうする。お坊さんへの寄付をどうするのか、運営が赤字にならず継続できる収支を組めるのか、密室で何かトラブルになったらどうするのか、予防策はあるのか。など考えることは山ほどあります。新規のサービスや事業を立ち上げていく要領で積み上げていきます。
オンラインのビデオや音声の対面サービスが、英会話やカウンセリング、スマホ電話占いなど他の業界でたくさん出てきているので、それらがどんなシステムとオペレーションを組んで、どんな規約を作っているのかは参考にさせてもらいました。
そして、裏側ではhasunoha共同代表の井上広法さんが監修してくれているので、お坊さん側のあれこれも考慮した仕組みや表現を工夫できました。
寄り添ってくれるお坊さんを応援したい
「ついに、インターネットでお布施をいただくまでに」で紹介したように、hasunohaで相談を受けた質問者の方が、直接お寺にお布施をされたり、お寺に会いにきてくれるケースが増えてきました。ネットのhasunohaの問答を通して、直接会いたいとご縁がつながることは嬉しいことです。
あるお坊さんのもとには、読者の方から「あなたの語り掛けるような優しい回答が私の苦しみを和らげてくれています。」と直接お礼のメールをもらうことが後を絶ちません。そのお坊さんには、お布施が送られたり、お菓子のお供えがあったり、若い学生さんからはLINEギフトでコーヒー券が送られてきたり。そのおきもちが微笑ましくて、ほっこりしてしまいませんか?また、あるお坊さんのところには、食べきれないほどのカニを送ってくれた相談者さんもあり。「ネットで質問。回答。はい、終わり。」でなく、「ご縁を繋ぐきっかけ」としてhasunohaがあって欲しいと思っています。
親身に寄り添ってくれる人は、お坊さんに限らず世の中にそんなに多くはいません。家族や夫婦でも近すぎて心配かけられないと話せなかったり、対価や利害関係もない他人にそこまでやれる余裕がないのが今の世の中だと思います。
だからこそ、どこの誰かもわからない人にでも抜苦与楽してくれるお坊さんを応援したくなるのです。そんなお坊さんの中でも生活費のためのバイトや副業でお坊さんとしての時間が削られてしまっている人も多いという話も聞きます。hasunohaを通じてのお布施、おきもちが、皆さんを迷いから救おうと(下化衆生)してくれるお坊さんによりまわっていくような仕組みを作りたいと思っています。
そんな思いもあって「オンライン個別相談」は有料で提供することにしました。hasunohaが利用料を受け取って、そこから個別相談をしてくれたお坊さんにいくらか寄付をします。相談の後、さらに「おきもち」で任意の喜捨をできるようにもしました。おきもちなのでゼロでも大丈夫です。「おきもち」は全額をお坊さんに寄付します。
遠くても、あのお坊さんと話せる
直接お寺とご縁が繋がって会いに行ける人は有り難いのですが、hasuonhaの回答僧は日本全国にいます。
azumaさんは栃木県、中田三恵さんは和歌山県、和田さんは広島県、釋悠水さんは兵庫県です。
大阪から栃木県。東京から広島県。距離という大きな階段がどうしても出てきます。
そこで、その大きな段差に一段追加して歩きやすくしたのがオンラインです。
オンラインなら、家から好きな時間にお互いが話せる。顔を見せることもできるし、顔は見せずに声だけでプライバシーを保つこともできる。
相談のあと、亡き人のためにその場でお経もあげてくれるかもしれない。涙が溢れるほどの温かい回答をしてもらったあのお坊さんに、直接お話を聴いてもらって、お経もあげてもらえたら。お経というものの本当の有り難みを感じるのではないでしょうか。
オンライン相談を実際にやってみた
開始から少し経ち、既にオンライン相談が実際に行われているので、どんな感じであったのかご紹介したいと思います。守秘義務があるので内容は公開できませんが、イメージできると思います。
顔見せ:zoomでは映像を相手に見せるか見せないかを選べます。今回はお坊さんが映像あり、相談者さんは映像無しでのお話になりました。
話の流れ:最初にご挨拶。以前Q&Aのやりとりをされていたので、そのQ&Aのフォローアップを少しします。その後に本題。お坊さんから「今抱えているお気持ちをおきかせください。」と語りかけられます。しばらく相談者さんよりお話をお伺いした後、お坊さんから
「お話伺いましたが、ご自身の状況を言葉で説明することで整理できますよね。今のお話でご自身を客観的にみることができるので話すことはとても大切なことなんです。それによっておのずから自分がどのような体質なのかを自覚できますから」というおことば。
これは、以前「仏教と精神医療の連携」で精神科医兼僧侶の川野泰周師が言われていたメタ認知ですね。
精神医療が必要な状態でない人でも、ここがとても重要だと感じました。普段顔を合わせている家族や友人、先輩はあなたのことをある程度知ってくれています。感情的に話しても状況や人柄から察してくれます。しかしお坊さんは第3者で、あなたのことを事前の相談内容からしか知りません。
そのお坊さんに自分のことを知ってもらうには、整理して自分の言葉で語らなければいけません。どんな状況なのか、それによってどうなっているのか、どんな気持ちなのか。自分を客観的に語る努力をする。これが、まず第一歩なのですね。
相手がお医者さんやカウンセラーならここから診療や投薬という治療になっていくのでしょうが、お坊さんの場合はここから「仏教の智慧と慈悲」によるアドバイスになります。
お坊さんがご自身の経験も踏まえたお話をして、相談者さんとの会話が続いていきます。一通り話した後は、残り時間は少し話題を広げた雑談の中でお坊さんからアドバイス。笑いもあり気づきもいただけたようで、声のトーンも明るく変わられていたのが印象的でした。
運営からの感想
親や先輩でもない確かにお坊さんだなと感じる部分が随所にありました。仏教用語を使った話は特にされていません。ご縁やめぐりあわせといったお話は心に残りました。テキストQ&Aにも良さはたくさんありますが、会話になると情報が行き交い、声のトーンなどからも状況がわかるので濃度の濃い時間を過ごせるように感じます。触れ合ってる感も大きいです。
相談者と回答者の間で依存関係ができてしまうのは良くないと考えています。先生の話を聞かないと不安で眠れない。何回も繰り返して話してしまう。そうやって月に何十万も使ってしまうことは幸せではありません。今回のシステムは1回ずつ申し込みが必要なので我に返る時間がある、お坊さんも不安を煽る話は一切せず、どうすれば涅槃寂静に向かえるかをその人に合わせて話してくれるので依存関係を作らずお話できると思います。(信じないと呪われる的な話をするお坊さんはhasunohaにはいませんので安心してください。)
依存には絶対させませんが、せっかくお金を払ってお話をするのであれば、意味のあるものにしなければなりません。hasunohaへのお礼で嬉しいのが、「何年も背負ってきた苦しみの一部がお坊さんのことばで少し荷を下ろせた気がします。」「あの子が苦しまずにいると聞いてほっとして涙がこぼれました。」「私の苦しみを肯定してくれて涙が堰を切ったように流れました。」など思わず心を震わせてくれるお坊さんのことば。そうやってQ&Aでもやり取りしたお坊さんと直接お話するのも心が通い合う素敵なものなるでしょう。お金を払うことで充実した時間にしなければと緊張感もあがりますし、お坊さんにおきもちもできるしです。
30分でも結構話せますよ。
お坊さんオンライン個別相談
別のお坊さんからの感想
zoomで初めて相談を受けていただいたお坊さんからもよいコメントをもらったので紹介します。
今日は、ビデオ通話大変良かったです。スムーズに話せることに驚きました。
文章で伝わらない、ニュアンスを伝えるのにこの手段は秀逸ですね。
相談者の方も大変喜んでおられて、私もうれしかったです。
こういった、お寺と利用者さんの垣根を手軽に越えられる手段はこれからももっと普及してほしいと思いました。有難うございました!
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